
妖しい魅力
昔住んでいた鎌倉で、バラを植えた庭の入り口に「取らないでください」の立て札をかかげた光景を見かけることがあった。
風光明美な鎌倉に観光客が多いのは、当然と言えば当然のことなのであるが、
看板の掲げられた庭は素敵な草花のありかを示しているようなものである。
人知を尽くしての努力はいまだ報われていない。
質の悪い観光客が、注意深くそっと庭に入り込むと、そこに美しいバラが現れる。
これはと思う花の根元に陽が当たっていたら、そっと近づき、引き抜いていく。
しかるにバラの育成は、よくよく勉強した人のみぞ知る法則に支配された必然の賜物であるらしく、だからこそ華麗、なんとしても手に入れたくなるものらしく。
いくら看板の制止を目にしようにも、盗人は大好物のいい香りですでに従惚状態、そう簡単に諦めてはくれないとは経験者誰しもが語るところである。
門を作って閉めておくという、まさに取られてなるものかという決意の塊。それですら敵は頑として譲らない。
信じられないでしょう?
門の閉まっている人の家の庭に入り込んで、美しい花を引き抜いていくなんて。
観光地を訪れているという開放的な気分のなせる技なのか。
バラの美しさが人をそこまで狂わせてしまうのか。
人は生まれながらにして美しいものに目がないうえ、その分野に限っていうなら、花泥棒は罪にならないということわざもあるくらい。
片手でひょいと抜いて、もう一方の手でささっと包む、というわけにもいかない。長さ80cm
以上という、まさに決意の花泥棒。
自宅から持ってきたスコップで、忍び込ませてきたエコバックなどを用意し、これに苗を突っ込むか、もしくは花と、根の部分を切り分けて埋没させる。
もちろん、はじめからそのつもりで、道具を持ってきての犯行ではない。
山の中で、ふと可愛らしい山草との出会いがあったら、少しだけ分けてもらうつもりの道具なのだろう。そう信じたい。
そのような植物好きの善良な市民がバラの至福の美しさを目にして、魔がさしてしまうのだろう。
あるお宅の奥様は言っていた。
「一言、分けて欲しい、とおっしゃってくだされば、喜んでお分けするのに・・・。ついでにバラのお話しで盛り上がったりして、良いお友達になれるかもしれないのに。」
極悪の犯罪者とちがって、花好きは悪人というわけではない。
ただ、バラの美しさが惑わせてしまうのかも知れない、と思う。
何度も被害にあったかわいそうなバラの庭の持ち主は、おそらくもう2度と盗られないと思って、看板をたてるのである。
けれども、それがかえってお宝のありかを示してしまうらしい。
「ご興味のある方は、お声掛けくださいね。」そういった内容の告知版の方が
効果があるのかも知れないな、と思いながら話を聞いていた。
植物の美しさは、植物好きな美しい心を持つ人すら妖しく惑わせてしまうのだ。
つまり、それほど、植物のある生活は魅力的ということ。
あなたも、その魅力に取り憑かれてみてはどうでしょうか。
もちろん、バラを美しく育てる能力を持つ奥様とお友達になれるやり方で!
きっと、人生が変わります。
今の生活を変えたいと思っている方は、是非植物のある暮らしということも選択肢の一つに入れてみてくださいね。
植物のある生活について、もっと詳しく知りたい方は、是非こちらから情報を得てみてください。